「ごん」という名の  
「ごん」はいま天国へ引っ越しました。 だから居所はわかりません。   かって「ごん」と心の通い合っていた人たちには  
いまも瞬間ではありますが 姿を見ることができます。
      
1999年5月28日(金)の出来事です。 登校時間に犬が 小2の子供を噛んだと言うことでした。 学校からの通報ですぐに捕らえられて即日薬殺処分をしたと言うのです
   それは「ゴン」という名の15歳の犬のことです。  「ゴン」は独り住まいの86歳のおじいさんと暮していました。  私の近所に住むゴンは、 夜7時になると決まって遊びに来ました。 ゴンはとても利口な犬なので 人の心を敏感に読むことが出来るのです。 時間がくるといつもベランダを爪でノックするので 開けると、すぐには入って来ません。 「おいで」と言うと大きな耳を頭にくっつけるように倒し、 うれしそうに体を低くして滑り込むように室内に入って来ます。 そしてそのまま、「服従ポーズ」を……  それは、お腹を上に向けてひっくり返り 嬉しそうに背中でずって甘えてくるのですょ。  あなたは犬が嫌いですか。 私の所では犬も猫も小鳥もハムスターも飼ったことがあります。 動物は一緒に住むと家族です。 みんなそれぞれにたくさんのエピソードや 思い出を残して逝きました。 私の暮らしの中に潤いと慰めを与えてくれた小さな家族たちです。  もちろんゴンも思い出をいっぱいのこして・・・・。 あるとき私は登校時間に、 小学生のする事を見ていたことありました。 ゴンに石をぶつけたり、け飛ばしたり、 ひどいことをする子がいました。  でもゴンは向かっていったり噛みついたりは絶対しません。 むしろ関わらないのです。  もちろんゴンに会うのを楽しみにしている子もたくさんいます。 だからゴンはその子たちに逢いたくて 登校時間や下校時間にやってくるのでしょう。 ゴンは私の所へ来るばかりではなく、回る家が何軒かあって 本当にみんなに愛されていました。 だからゴンは町内の犬なのです。  事件のあったとき関係者の方は  子供がゴンに何をしたのかという事実を調べたのでしょうか。 噛んだと言う結果だけですぐに結論づけたのでしたらとても残念です。 あまりにも事務的であたたかさを欠いていませんか。 ゴンは 何もしない人に襲いかかることは絶対ありせません。 後で聞いたことですが小2の子供はゴンに逢うのを 楽しみにしていた子の一人で、ゴンを撫でていたそのとき、 誰かが石をぶつけました。 驚いた犬は反射的に軽く噛んだそうです。                   (これは子供の母親の話) もし本当に襲ったのでしたらもっと深い傷になっていたでしょう。  そしてこれも後になっての話ですが、 おかあさんはゴンの処分を知って  そこまでしなくても・・・・。と言って悲しまれたとか。 人を信じて疑わない動物を問答無用で殺してしまう・・・・・。 それは命の尊さ教えることとまるで逆行しています。 子供の前で何ということを選択したのでしょう。 ゴンはどんなに無念で悲しい思いで死んでいったのか・・ 人の言葉が使えないからから何の反論もできぬままに・・・。 薬殺された後でゴンの首輪には 平成11年度の予防注射済みの金具がつけられてあり、そのうえ 首輪には飼い主の住所、名前、電話番号が記されてあったのです すべてが終わってからおじいさんの所へ、 つまり事後承諾だったそうです。 これは私が役場へ聞きに行ったときのはなしです。 犬がふたりの小学生を噛んだ・・・・・ こどものズボンの上からなのですこし赤くなった程度。 もう一人は歯の跡がすこし残った程度 ゴンは年を取っているので歯が抜けていて噛むような歯は無く 犬歯も欠けています。 ゴンは5月17日予防注射をうけていました。 翌日うちで遊んでいるときに私は見ています。 5月27日は雨でした。ゴンは体が濡れていて、 うちに遊びにきたときは遠慮をして家の中には入りませんでした。 その最後となった日はチーズを食べただけで帰って行きました。 ゴンの大好きだったチーズ・・・・。  いま冷蔵庫の中にゴンのチーズがいっぱい残っています。 小さな花を踏まないように気づかつて、 今夜も庭の角を曲って入って来るような気がしてなりません。 帰ってゆく時は ふさふさの白っぽ〜いしっぽが 闇に吸い込まれるように消えて行きました。 いつでも・・・。 最初に私がおじいさんを訪ねた夕方「ゴンはもう帰ってこないぞー。 人を噛んだって言うんだから仕方ないべー。」 とぶっきらぼうに言って奥へ引っ込んでいきました。 仕方がないということばの裏側に  その逆の思いが何十倍にも膨らんでいたことを感じました。 そして昨日おじいさんを訪ねた時、 おじいさんは肘を4針縫う怪我をしていて、 「ゴン来ないなぁ〜」と言っているのです。 おじいさんは肘ばかりではなく 肋骨も骨折していました。 軽い脳梗塞の後遺症のある人で 某クリニックの訪問看護を受けています。 病院のスタッフではどうしようもないひとりぽっちのさびしさに 深酒をして、家で転んで怪我をしたのです。 私でさえこんなやり場のない気持ちでいるのですから・・・・。 役所では犬を繋いでおくように注意をしていたから・・・と強く言います。 その通りでしょう。 ・・・・・・。    犬というよりもゴンのもう帰ってこない命が どんなに大切だったことか・・・・・・。 今までゴンがおじいさんを支え、 今日までゴンが私を無邪気な気持ちにさせてくれました。 くりかえしますが、ゴンは小学生たちにも可愛がられていて、 だからその子供たちに逢うために登校時間来るのです。 現在はいろいろな事情でペットをなかなか飼えなくなりました。 ゴンと子供たちのこんな自然な触れ合い方は 理想的ではなかったかと思います。 長文になりました。     ご意見・ご感想  おねがいします。                            矢恵子
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